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ユーザーの心に響く体験の「物語」を創りだす、ストーリーマッピング

デザイン

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ストーリーマッピングという手法をご存知でしょうか。先日、渋谷ロフトワークCOOOP10で行われた「顧客を巻き込むストーリーマッピング」というセミナーに2日間に渡って参加してきました。また参加するにあたり読んだ書籍「ストーリーマッピングをはじめよう」の内容から得られたもの、気づいたことを振り返りたいと思います。

ストーリーマッピングとは

普段はあまり気に留めていませんが、生活空間の周囲には「ストーリー」が溢れています。テレビをつけるとドラマやドキュメンタリー、CMが常に流れていますし、本を取ればミステリーや童話、コミックが多くの物語を生み続けています。演劇や歌舞伎も同様でそれらにはストーリーが存在しています。

ストーリーは、事実の積み上げによって構成される読み物よりも受け入れやすく、注目しやすく伝わりやすい古典的ながら強力なメソッドです。 製品・サービスや、ブランディングにおいても、ストーリーで語ることは売上、カスタマーロイヤリティに大きく影響します。

ストーリーマッピングは、ユーザーに利用してほしいサービスの体験をストーリーの時系列の流れ(ナラティブアーク)に沿って配置して検討する手法です。サービスを物語として、ユーザーを主人公としてとらえることで、ユーザーにとって理解しやすく価値のある体験を生み出すことができます。時系列のプロットポイントごとに何をするべきか検討し、前後のつながりや全体の構成を決めるためのフレームワークです。

セミナーの概要

セミナーは2時間×2日間に渡って行われました。合わせて4時間程度ですが、ワークショップが多く、時間が足りないくらい忙しい内容でした。

1日目は、ストーリーマッピングの概要説明の後、グループに分かれて自己紹介を行いました。その自己紹介の内容をストーリーマッピングの手法で構成し、プレゼンテーションを行いました。自分の今までの生い立ちから挫折や困難があったこと、そこからどう変容して自己のハイライトを迎えたかを物語の流れで語ることで、聴きやすく語り手の感情に寄り添いやすくなる効果があると感じました。

次に、直近の旅行体験ストーリーマッピングの手法で話してそのインタビュー内容を「ナラティブジャーニーマップ(以下、NJM)」にまとめるということをグループワークで行いました。NJMとは初耳でしたが、「カスタマージャーニーマップ(以下、CJM)」と似た構造、手法を指していると認識しました。ちなみにナラティブ(narrative)は「物語」とか「語り口、話術」といった意味があります。

NJMでは、旅行体験を時系列に並べ、具体的な行動といくつかの行動をまとめたラベル、感情曲線を書いて完成させます。

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次に、その行動や感情曲線をもとにアイディアを発想していきます。このワークショップでは、「AR技術を使って」という制限をつけてアイデアだしを行いました。アイデアは制限がないよりもあったほうが考えやすく実用的なものも生まれやすいと思うので、良い方法だなと再認識しました。わたしの考えたアイデアはひどいものでしたが、周囲の人のアイデアを聞いていると製品化もできそうなものもいくつかありました。集めた個人のアイディアをMVP(Minimum Viable Product、ここでは実用最小限の製品企画書の意)として参加者それぞれ1枚の紙にまとめて1日目は終了しました。

2日目は、作ったMVPアイデアを自分の家族や友達、会社の同僚など周囲のひとに聞いた結果とフィードバックやそれを受けて修正したことなどを共有しました。

そして、そのMVPアイデアをストーリーマッピングの手法で可視化しました。MVPを使う状況やその際に起こること、危機(トラブル)、クライマックスなど7つのマッピングポイントに分割し、ストーリーを形作りました。アイデアを下記のように7つのポイントに分けて貼り付けていきます。下記の図では4人分のアイデアが写り込んでいますが、7つの付箋に分けてアイデアをまとめています。

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その内容を参加者内でプレゼンし、レビューや改善点の探索を行って2日目は終了しました。

ストーリーの構造と種類

ストーリーの構造は下記のように分類できます。ワークショップでの例を当てはめると下記のような順序で7つのプロットポイントごとにユーザーの体験を配置していきます。下記は「ユーセージストーリー」のポイントです。

  • 1)状況説明 ー ターゲットや顧客は誰か、目標や問題は何か。
  • 2)事件の発生 ー そのサービスを使うきっかけ
  • 3)盛り上げ ー 顧客が最初にすること、つぎにする行動
  • 4)危機 ー 問題解決をたちはだかる壁、ハードル。
  • 5)クライマックス/解決 ー 体験のハイライト。
  • 6)落とし込み ー ハイライトのその後。
  • 7)エンディング ー 顧客がどう変容しメリットを得てどこへむかうのか。

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書籍「ストーリーマッピングをはじめよう」では、ストーリーを3つに分類しています。

1.コンセプトストーリー

コンセプトストーリーは、ターゲットユーザーにサービスを知ってもらうフェーズの体験をストーリーにしたものです。サービスコンセプトを物語にしたもの、といえます。ユーザーがあるサービスを知ったときに、ユーザーが抱えるどんな問題を解決してくれるのか、提供する価値や競合優位性は何かといったサービスの全体像を伝えてユーザーが持つ印象を形作るものになります。正しく伝えることができればターゲットユーザーはサービスの価値を理解し興味を持ってもらうことができます。

2. オリジンストーリー

オリジンストーリーは、ターゲットユーザーがはじめてサービス顧客となるまでのストーリーです。Webサービスに当てはめるとサービスサイトに訪れて、登録や購入などをするところまでが範囲になります。コンセプトストーリーがサービス価値を定めたものに対して、オリジンストーリーでは、サービス価値をどう伝えて、登録や購入を行ってもらうかの伝え方を考えます。

3. ユーセージストーリー

ユーセージストーリーは、ユーザーがサービスを使っていく過程を表した物語です。プロットポイントごとにサービスを使う上で発生する行動をマッピングして形作るものになります。オリジンストーリーが使う前から使い始めるまでを定義したものであるのに対して、ユーセージストーリーはサービスを体験中のできごとを中心に扱います。

カスタマージャーニーマップとの違い

セミナーの講師は、「NJMはより生々しく抽象化しない個人の話、物語を可視化しています。NJMは新しいアイデアを出すためのスプリングボード(土台、アイデアボードのような意味)であり、CJMは顧客体験の改善を目的としています。」とおっしゃっていました。ただ、わたしとしてはほぼ近い役割と目的でありCJMベースでNJMがやろうとしているアイデア発想のベースとしての利用もできるのかなと思います。ジャーニーマップでも現状分析だけでなく新サービス開発において別の役割を持たせることができるからです。そのためジャーニーマップからもアイデアを生むようなコミュニケーションが生まれることは多くあると思います。

ストーリーマッピングの長所としては、どう体験させるかを「ストーリー」のフレームで考える必要がありそのストーリーの強力な伝達力を活かせることが強みだと感じました。また、常に主人公やその目的を意識するため自然とユーザー中心のサービス設計となりやすいと思います。CJMにストーリーマッピングの手法を重ねて検討することも有効ではないでしょうか。

気づいたこと、振り返り

ストーリーマッピングを行う上で、クライマックスが重要なの言うまでもありませんが そのためにはクライマックスの途中にある「危機」が重要なことを学びました。クライマックスが盛り上がるためには、その前に障害があったほうがより良いストーリーが生まれます。

ドラゴンボールのナメック星編でいうところの危機が、「わたしの戦闘力は53万です」であったり、フリーザ様の「3段階変身」であったり、クリリンが犠牲になったからこそクライマックスのスーパーサイヤ人への進化が盛り上がる!ということでしょうか。

ただ、サービス設計においては危機や障害を作り出すことが重要なのではなく、サービスにはどのような危機や障害があるかを把握し、ユーザーにとってスムーズなストーリーとして織り込んでゴールへ向かってもらえるかを考えることが大事だとも書かれており重要なポイントだと思いました。

調べきれていませんが、映画にも色々なストーリー展開があるようにナラティブアークも一種類ではなく異なる型や派生の型があるのではないかと思います。そのパターンを見つけてサービスにあった展開を考えるのも面白いのではないかと思います。

この手法を使うことで、自然とサービス設計がユーザー中心となり時系列で起伏のある物語として見ることでよりワクワクするサービス開発に役立つのではないかと思います。また、普段の会話やパワーポイントの資料作成、プレゼンテーションにおいてもストーリーマッピングに基づいて構成を考えると、より良いコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

株式会社インディバル、クリエイティブデザイン推進室所属。 入社8年目のデザイナー。UX/UIデザイン、情報設計、デザイン、コーディング、グロースハックなど幅広く取り組んでいます。最近DIYに目覚めて、子供のベッドを作ってみよう!と思う今日この頃です。